白い壁に手を
番田
こうして書いていくことだけ
特に 思うことはない
寂しさを紛らわしたいだけ
そう思っていた
そう思うことだけ
過去の自分をうち消していく
得られるものは 何もない
無機質な職場で
いつもそんなことばかり 考えていた
冷たい風が吹いている
ここで立ち止まるべきなのか
それとも 走り出すのか
あの橋を渡りたいと
夏の日の記憶を見ていた
コーヒーの匂い
でこぼこな 遠くに見える新宿の風景
角で紹介されたところはおいしくなかった
中華街を歩き回る夜
きっと中国人の望む店なんだろう
というよりもむしろ
会社を辞めて
友達はもういないのだと気づいていた
この街の中を流れていく人たち
僕にとっての友達とは何
そう思いながらも死んだ体で
酒を飲んでも得られるものの影もなく
白地図のような未来が
壁のハンガーに吊されていた
子供だった頃
愛されていたことに気づかなかった
夢だけに夢中でいられた頃だった
そんなことはどうでもいい
今はただ 本を読むことに夢中で
移り変わる日々が ただある
この前はカラオケで
雑誌みたいに 悲しい ページみたいに
誰にも 気づかれないまま
過ぎていくだけで