はる
平瀬たかのり

 四年京都に住んで
 今でもよかったと思うのは
 はる を覚えたことだ
 生まれ在所に戻ってからも言っている

 開けてはる居てはる植えてはるえづいてはる起きてはる
 噛んではる切ってはるくたびれてはる蹴ってはる困ってはる
 さすってはる死んではる住んではる急いてはる揃えてはる
 立ってはる千切ってはる積んではる手招いてはる飛んではる
 泣いてはる握ってはる抜いてはる寝てはる乗ってはる
 走ってはる弾いてはる踏んではる減らしてはる惚れてはる
 待ってはる見てはる剥いてはるめげてはる揉んではる
 妬いてはる酔ってはる
 ラリってはるリードしてはるルンルンしてはる礼言うてはるロマンポルノ見
  てはる
 わくわくしてはる

 贈って重宝、使って便利
 つまりは現金みたいな語尾を
 手に入れたわけなのだえっへん
 まあ誰もお釣りをくれないけれど

 それから
 足しげく大阪にも通ったぼくは
 豚バラ肉を溶き卵でくるんで
 じゅうじゅう焼いてソース塗って食べる
 とんぺい焼きも知った

 十九歳のぼくはきっと
 感動していたのだ
 谷町六丁目空掘商店街入口の
 お好み焼屋「DAN」のおばちゃんが
 鉄板上の豚バラ肉を
 コテ翻し次々と
 ひっくり返していかはる
 その美しい手さばきに


自由詩 はる Copyright 平瀬たかのり 2013-10-10 20:21:40
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