旅人
由木名緒美


長い旅路だった
絶望の灯火を燃やさねば
死すら受け入れがたい道を
ただ歩いて

私は太陽に触れる
命の限界を超えて愛するは
その代償も大きく

喜びと苦痛は何処で結ばれ輪になるのか
あなたの熱はあまりに熱く
後れ毛が焼け焦げるほどの情をほとばしらせて
煙が明日を 白に飲み込もうとする


すべての体験を清算しよう

絶望は
群青の空に浸透する午前五時の光の中へ
消えゆく影は希望の肌をいっそうすべらかに照らしていった

天高く昇った太陽を仰げば
収斂する瞼の裏に
走馬灯のごとく記憶が波打つ

愛するが為に捨てた無数の愛着を
ひとつひとつ取り戻していく二度目の旅路で
どんな過日を塗り重ねるだろう

暗記した道程の先端で結ぶ印の数々
切手を貼らない封筒の中で 
あなたに宛てた、その行間は

静かに呼吸する 私の胸の中で
そっと産声を上げるのだろう


自由詩 旅人 Copyright 由木名緒美 2013-10-04 21:11:29
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