憎まれっ子世に憚る
瑠依

神さま、神さま。
お願いがあるのです。
あんたは神さまなんだから、聞いてくれるでしょう?

なんだい人の子よ。
わたしに何を強請るんだい?
聞いてから答えようぞ。
言ってご覧なさい。

ぼくはね、死にたいんだ。
ぼくはね、死にたくないんだ。
どっちも本当でどっちも嘘なんだ。
ぼくはどうすればいいと思う?
どうもしなくてもいいんだろうね。
だってそのうちぼくは必ず死ぬもの。

なんだい人の子よ。
神さまに愚痴相談かい?
まったく罰当たりなことだよ。
二律背反とはよく言ったものだけれど、
お前さんは悩んでいるんだね。
かわいそうに。

同情してくれるの?
神さまって案外慈悲深いんだね。
ぼくは神さまってやつは極悪非道だと思ってた。
だって、
この世はこんなにも不幸じゃないか。

好きで不幸を振りまいてるわけじゃないさ、
きっとね。

きっとだなんて、適当なことを言うね。
なんだかバカらしいや。

断定なんてできないさ。
だってわたしは神ではないのだから。
おっと先に言っておくが、
神さまだと勝手に思ったのはきみだ。

へえ、だからってそのまま成りすましたのか。
ぼくはまたひとつこの世界に失望したよ。

じゃあわたしがひとつ希望をあげる。
プラスマイナスゼロだ。

そうやってなんだって理屈で語る大人が嫌いだ。

わたしだってきみみたいなクソ餓鬼は嫌いだよ。

じゃあ死んでもここに居座ってあげるよ。






自由詩 憎まれっ子世に憚る Copyright 瑠依 2013-10-03 21:28:42
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