僕にかかる期待
創輝

僕は期待を裏切るために生まれてきた
運動の得意な子であるという期待 素直でいい子であるという期待
誰にでも優しいという期待 いろいろな人に好かれ自分から進んで周りと交流するという期待
重苦しい期待を 僕はゴミ箱に捨てる
僕は僕に期待をしないことにしているからだ

はじめましては僕がこの世界で産声を上げる10月と10日ほど前だったかね
僕は僕という存在を構築するありとあらゆるぼくの「人格」と出会い
百年程というとてつもなく長い時間を彼らと過ごさねばならないことに絶望したんだったね 覚えているとも

僕らはけして迎合することの出来る人格同士ではないからさ
「優しい」という人格だったら「自分勝手」という人格と相容れなかった
少しずつ 少しずつ 互いの存在を押し合い 退け合いながら僕らは一つになった

どうして僕という人格が一番前にいるかなんて分かってる
僕という存在はつまるところ流されやすいんだ ありとあらゆる人格に
だから いろんな場面でいろんな人格が僕を跳ね除けて飛び出してくる
だけど流されやすい性質の僕は また一番前に戻ってくる

僕は僕に期待することをやめた
僕は僕というたった一つの生命体すら自由に操ることの出来ない無知な存在だ
どうして僕に期待などするのだろう
優秀な人格は眠ったままだ
愛される人格はそっぽを向いてる
そのくせ負の感情の人格ばかりが僕にまとわり付いてくる

だけどこうやって呼吸を続け
100年足らずの人生を動かすんだ 流されやすい  か  ら?





僕は期待していいのは一つだけなんだろう
だけどまぁいいや そんなの僕には関係ない

状況に応じて バカみたいに優秀な人格をたたき起こして
愛される人格を多用して
負の感情には毎日のように振り回されてやる

僕は 僕に 一つだけ期待してるんだから

僕が僕のままでこの世界にうまれてきたように

僕が僕のままで眠りにつけますように いい子じゃなくて 運動が得意じゃなくて
社交的でもなければ人格者でもないような 僕のままでいますように

あしたは退屈な日常が始まる
また 僕は僕をコントロールしているという錯覚に陥ってみる
周囲の期待をゴミ箱にいれ 掃き清め
世の中を斜め上から見たような声でこう呟くんだ

 僕は何も出来ないけどね

 きみだって何にも出来ない道化師だろう?

ってね

君は何も答えられないだろうから 僕も何も言わなくなって

二人して期待をゴミ箱に捨てましょう!


自由詩 僕にかかる期待 Copyright 創輝 2013-09-27 19:01:54
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