明け方から寒い風が
オイタル

明け方から寒い風が吹いた初秋の昼すぎ
誰かが玄関に来て
こっそりと家人と話しをしている
いやな話しをしている

ガラス窓は水の色に曇って
庭の木が風で揺れるのも見えない
私はひそかに階段を巡って柱の陰に至る
行きがけに 小さな犬のぬいぐるみの首を回して

玄関の誰かは 家中の気配を
読む様子もない
私はしばらく薄い障子の陰に潜む

その時 硬く湿った空の中から
段ボールでできた会社員が一人生まれて
風の階段を滑るように下ってきた


自由詩 明け方から寒い風が Copyright オイタル 2013-09-21 17:50:43
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