さみしがり屋のオニ姫
ヨルノテガム



 女は金を余分に置いて よく眠れたわ と言い去った

 サヨナラの前
 女は 知らないわよ おバカな奴隷さんね と
 綺麗な高い声で言ってこちらをロクに見ず
 鏡の前で鬼化粧に余念がなかった

 あの細足の白さが お箸のように揃っているのが
 思い出される 普段、タマネギを見るたびに
 あれから ほんのひと月ふた月しか経っていないが

 私は闇間に少し狂いそうな顔模様をしていたに相違ない
 どうやってほとんど隙間なく足首に通したことか
 いっそ、足指か たまねぎリングをがじりと甘噛みして
 震え上がらせてやろうかと思案した
 しかし、到底できるはずなく
 女のスヤスヤやかに眠る呼吸調子に気持ちが急に
 優しくなってしまって 女を前にこちらも
 眠り入ってしまったのだ

 まるで性器を生けた白磁の質肌
 堪らず、頬鼻をそろりと添わせてゆくと
 タマネギの匂いがして 目を疑った
 どうしたことか 足首の片方にオニオンリングが
 ぴったりと はまっているではないかっ!
 まじまじと眼を開くままに
 うっすら、特有の涙を漏らしてしまいそうで
 なんとそれは新鮮なのだ!った

 男は
 密やかな夜に
 闇明かり  ぼんやりに浮かぶ
 眠る女の細足を
 そっと撫でた











自由詩 さみしがり屋のオニ姫 Copyright ヨルノテガム 2013-09-20 03:33:10
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