一夜の祈り
ヒヤシンス

朽ちてゆく薔薇に敬虔な祈りを重ね合わせる深夜の戯れ。
矛盾のように見える行いのうちに机上の蝋燭の火がゆらゆら揺れる。
古い書物の中、詳細に描かれる神々の行為に戸惑いを感じ、
劇的な出会いを求める私の魂はふと忘却の泉に足を向けそうになる。

何を怯える事があるのか。戻ってこい!私の半身よ。
神話の中にのみ息づいている神々に現実の私が踊らされる必要はない。
それでもその力は強大で全知全能の神に支配されているような感覚に
私の生の源までもが揺さぶられるようだ。
 

おお、薔薇よ。お前も見えない神に支配され、朽ちるべくして朽ちてゆくのか?
戯れから始まった私の深い祈りもお前のその妖艶な姿を甦らせる事は出来ないのか?
現実と幻想の狭間から薔薇に恋心を抱いた巨人の瞳が覗いている。

無情を孕んだ風に机上の蝋燭が消える。
これは神話の世界の終わりを告げる風か、もしくはさらに我らをその世界へと誘う風か。
目の前の薔薇は朽ちたが、私の祈りはこの一夜の懐深く続いてゆく。


自由詩 一夜の祈り Copyright ヒヤシンス 2013-09-18 01:14:21
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