湿夜絵
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公団に住まうこと
人生の約4分の3
何度もベランダで煙草を吸っては
コンクリートの嘘を焦がした
網戸を水玉模様に溶かして遊んだのは
狂っていた夏のある夜
孤独の空気に死にたくなれない自分が
気に食わなかった頃
色鉛筆に水を含ませて
少しとけだした色を
画用紙に置き去りにする
白い画用紙が夜のベランダと反発して
ぽっかりと心に浮く
湿っぽい色鉛筆の色が
寂しそうに踊り始める
煙草の灰がぼとりと落ちて
本物の灰色を濁しながら
くくっと喉をならす
かなわないな
コンクリートの嘘を焦がした夜は
自作自演の嘘に焦がれて
少しだけ呟いて
ひとしきり湿らせてからベランダを後にした