仮面とドクロ
ストーリーテラー

魚の骨が刺さったような顔
青く鋭い涼秋の憂鬱
仮面はかってに動き出して
僕は知らない女と饒舌になった

保健室のガーゼみたいなウイスキー
茶色く廻る酒場の喧騒
仮面は鍵を奪い去って
僕は嫌いな友を酔わせた

どこまでも伸びてやがて折れる鼻
黄色い妖精の無邪気な嘘
仮面は僕のわき腹をくすぐって
僕は僕を好きになった

なんだか怖くて仮面を外すと
誰も僕だとわからなくて
僕は骸骨と踊るよりほかなくなった

骸骨たちは憐れみながら、ケタケタ笑って
こぞって僕を取り合った
一番弱い骸骨が、小さな髑髏を持ってきて
僕は喉から魚の骨をとりだした

退屈に眠りつく動物
白く凍った霜ばしらの身ぶるい
髑髏は夜を長くして
僕はいつまでも眠った

どうしても証明できない命の羅列
やがて立ちのぼる緑と潤んだ大地
髑髏は不機嫌になって
僕はオオイヌノフグリを嘲笑した

全てを見下す終焉のありがたみ
何億光年開くことの許されない真っ黒
髑髏は得意そうに頷いて
僕はいつしか叫んでいた

文化の詰まった本棚の上
仮面は泣いて
髑髏は笑う
二つはいつでも向き合って
今日も僕と遊びたい


自由詩 仮面とドクロ Copyright ストーリーテラー 2013-09-06 23:02:27
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