かるく こぐ わたしのまち
吉原 麻
【1丁目】
日が昇る前の朝5時半、自転車で坂道をのぼる。買ったときは黒くて、今は灰色になってる自転車。本当は余裕の表情で坂道をきりぬけたいけれど、ハンドボールの選手をやめてから2年たってしまった足腰と6年間という喫煙歴がそれを邪魔する。
【2丁目】
立ってこいでこいでこいで、犬がフェンスから顔を出している「いぬのおうち」のかどに出る。「いぬのおうち」でシェットランドシープドックを10秒ほど眺めてからまた自転車にまたがる。うちには犬はいないけれど、母親が許してくれればいつでも飼いたいと思ってる。
【3丁目】
その先の、チェイサーとインテグラタイプアールとフェアレディZとワンエイティが停まっている駐車場は、犬の倍、眺める。このままだとバイトに遅刻するので慌てて走り出す。もうすぐ駅だ。
【4丁目】
駅のそばは驚くほど緑が多くて、はじめてうちに泊まりにきた友達達は皆声をそろえて「いなかみち」とばかにする。そして駅から我が家までの道程を「小旅行」と呼ぶんだ。まっすぐ歩けば遠くないのに、案内する私がいろんな所に寄るから、「小旅行」に仕立て上げられてしまった。
自転車で30分の遠回りをして徒歩8分の駅につく。
日がのぼりはじめる6時すぎ、駅前の喫茶店、ここから一日がスタートする。
西友の屋根の上から日が差し込み始めたら、自然と笑顔がもれる仕組みになってるらしい、私って。
自由詩
かるく こぐ わたしのまち
Copyright
吉原 麻
2005-01-06 14:55:46