緑のおもいで
石瀬琳々

あの月をおぼえている
かつて輝いた太陽を知っている
その手に触れたものも
触れ得なかったものもぜんぶ


それは、
緑陰にそっと揺れていた
真昼のしんとした光を浴びて
それは、
あなたとわたしが触れた
名も知れない小さな花


ふるえていたのは風のせいではないこと
あなたとわたしの唇が
かすかに触れ合ったことなど


黄昏は早く訪れた
誰もいない花影でふたり
月も太陽もすべてわたしたちのものだった
見知らぬひとのほほえみさえも


それは、
緑陰にそっと眠っていた
わたしたちのもうひとつの翼
それは、
あなたとわたしが放した
名も知れない小さな鳥


アイシテル アイシテル
やさしい声でくり返すリフレイン
すべてわたしたちのものだった 月も太陽も
見知らぬひとのなみださえも




自由詩 緑のおもいで Copyright 石瀬琳々 2013-08-21 06:03:15
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