真夜中の迷子
マチネ

ゆるやかなかたちをした盆の夜に
引き離された電信柱は
ふるえる蝉の叫びを聞きつつ
ただひとり
とーん
と、立っているのであります。

向こうの小路の小さな光は
いったいどいつのあかりであろか

白々とした夜の田園に
取り残されたビニル案山子は
遠目に蛍の灯りを眺めて
すん
と、うつむいているのであります。

森の向こうでごうとなくのは
かぜであろうか、それともやはり

トラクターが走り去る

コンクリートがなめらかな体を固め
石油の流れが膜をはりつめ
やがて引き離されて
取り残されて

忘れたのだね

置いていかれた夜中の迷子は
かくのごとく
さみしく
つぶやいているのであります


自由詩 真夜中の迷子 Copyright マチネ 2013-08-16 01:12:35
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