精神は夜に飛ぶ
佐々宝砂

闇黒こそは好ましい色だ
そこに何があるかわかりはしないから
闇黒ある限り
人は何かを想像し続ける

などという警句もどきを
てのひらで丸めてみる
睦月
この部屋は明るい
パソコンの画面も明るい
月が明るく見えるかどうかはわからないが
月の半分が明るいことは間違いない

この身体は瓜から生まれたのではないけれど
不自由だ
その身体は桃から生まれたのではないけれど
義務を背負っている

光り輝く理想を抹消せよ

照らし出す白は好ましい色ではない
それはすべてあからさまにさらけ出すから
照らし出す白ある限り
人は想像を喪い続ける

てのひらで広げた箴言もどきは
もう箴言もどきであることをやめ
ぎらぎらのごつごつの重いチョーカーと化して
首に食い込み
この肉体を縛っているらしいが

生憎と精神の方は
闇黒の洞窟を
限界があるとしても見えはしない洞窟を
飛び回っている


自由詩 精神は夜に飛ぶ Copyright 佐々宝砂 2005-01-05 02:02:54
notebook Home 戻る  過去 未来