野ばら
ヒヤシンス


上昇志向の階段を私は昇ってゆく。
脇目も振らず昇ってゆくので、私は周りの景色が分からない。
足元に広がる野に咲く薔薇よ。
お前はその身に纏った棘を研いで、私の転落するのを待っているかのようだ。

私はなおも昇ってゆく。一段一段ゆっくりと踏みしめながら。
しかしやはり足元しか見ていないので、私は周りの景色を知らない。
野に咲く薔薇よ、お前は私に訊ねる。
なぜあなたは自分の足元しか見ていないのか、と。

おお、野ばら、答えよう。
私は恐れているのだ。この先何が私を待ち受けているのかを。
先の見えない階段を上るのは私の心の働きからだ。

野ばらは言う。あなたは周りに広がる空間や連なる繋がりの美しさを見ないのか。
あなたの手足は震え、心もつま先立ちです。私の棘を怖れずに行きなさい。
咲き誇る綺麗な花々を見て、純粋さをはき違えるのはおやめなさい、と。


自由詩 野ばら Copyright ヒヤシンス 2013-08-06 19:00:27
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