ぼくは夢は書けない
創輝

「ぼくの夢」 と書かれた作文用紙に、続きを書かない。
それを見咎めた先生がぼくに近づいてくる。

お前に夢はないのかなんて熱血ゼリフを言ってる先生がいる。
先生には夢があるんですか?なんていう風にたずねたら先生ににらまれた。

先生が言いたいのはつまり「子供とは夢を持たなければならない」っていう押し付け理論なんでしょう、なんて言葉を飲み込んだ。ぼくが夢を大声で語ったら、百人聞く友人のうち90人は大笑いして、8人は意味が分からない、なんだこいつはって言う視線を向けるだろう。残りの二人は表情が読めない笑顔で、二人だけで話してるだろうな。ぼくの夢とはそういうものだ。
子供が夢をもてないなんて…。 先生が嘆くけど、ぼくは嘆く理由すら見つからない。
ぼくらが生きているのは「現実リアル」なんだよ。夢を語る理由がどこにある。

あいつは夢を持ってるぞ。先生がぼくに哀れむような視線でこういった。
あれは夢なんかじゃありません。なんて言ったら先生は赤くなって怒り出した。

先生は「夢」を間違えています。だって先生、叶わなくても夢を持つべきだなんて「叶わないのが夢」だなんて思ってるんでしょ、って言ってやった。
医者になりたい と 医者になる は違うんだ。ぼくらは甘い夢に浸ってるだけじゃこの世界を生き残れない。ぼくが「夢」を語るだけで何もしなければ、ぼくの友人は皆ぼくから離れて行っちゃう。ぼくも、ぼくから気持ちが離れてく。
あいつが持ってるのは目標だ。ぼくが皆に言えるのは「努力」をしている目標だけだ。

俺は、幼稚園のときの夢は叶わなかったけどそれでも今は別にいいんだ、なんて先生が言ってるよ。先生のはどこまでも夢だったからですか、なんて思った。

幼稚園のときの夢が叶わなかった理由は、それが「夢」だったから。努力しないままでいたらそれは「夢」のまま。叶わない夢はぼくは見たくない。

目標だって達成できないかもしれないぞ、なんて先生が言ってくる。
多分、そのときはぼくだってぼくの友人だって泣くでしょうね、って答えといた。

夢が叶わなくても、ぼくは泣けない。夢にあこがれる気持ちを努力と見間違えられるほど、ぼくは ぼくらはもう子供じゃない。
目標を達成できるだけの努力が足りなくて 何かが足りなくて 目標に届かなかったときにぼくは泣くことができる。

お前、それでいいのか?なんて先生は、眉尻を下げて困った声でたずねてきた。

夢だけで生きていけるほど 甘い世界じゃないなんて ガキでも分かることですよ。
現実だけで生き延びれるほど強くないなんて 誰より分かってることですよ?
世間はちょっと厳しい情勢にあるようですから、バランスを取れないと波に飲まれて終わりでしょ。
ぼく 器用じゃないですけどね。
努力にだけは器用さがいらないって分かりましたし、どうにかなりますよ。
目標を達成した分、バランスをとりやすくなれるそうなので。

そういいながら作文用紙に手をつけた。
ぼくの夢 ぼくの目標」


自由詩 ぼくは夢は書けない Copyright 創輝 2013-07-31 15:06:14
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