劣等感のミント感
Neutral

陽が照らしつけるバス停の 屋根の下で涼む僕の
隣に座っていたどこかの会社員さんは
今 自販機の側に立って得意げに煙草なんか咥えている
吐き出す煙が空の雲に溶けてすぐ見えなくなる様は
この空を何度越えようとしても
跳ね返されて落ちていった者たちの様子を
皮肉っている様に見えた
彼もまた 出世街道まっしぐらの
淘汰する側なのか

真摯な生き方をしても
正しい大人になどなりようのない人はたくさんいる
しかし一方で風の様に
この世界を渡っていける人格の持ち主たちは
もはや存在そのものが才能の暴力
そして最悪な人間というのは
溢れる富と名声と力をこぼさないようにしっかり抱えながら
犬の小便のように道端に煙草の匂いを染みつかせ
世界中を練り歩く大人の事だ

大人を馬鹿にして
大人にもなれない僕は開き直る
どろどろの成功をみじめにもがきながら鷲掴みするより
盛大に失敗し恥を晒す為の努力の方が気分が良いと
世界中に聞こえる声で演説したい
僕の夢は ミントガムの甘い匂いを世界中の風に乗せて
大人の心からタバコの味を忘れさせる事なんだ
それを叶える力は才能じゃない

この日差しの中
彼は日陰にも入らないで一体何を見ているのだろう
自販機の足元に打ち捨てられた
煙草の灰が詰め込まれた空き缶の匂いが
風に乗って日の沈む方向へ駆けてゆく
タバコの匂いは世界中の汚れを増幅させる
人の悪意の産物なんだよ
僕は また朝が来て
あの風が一周してここに帰って来た時の事を想像した
それは劣等感のブレーンストーミング
だからあの時
どうせ大人の灰皿にされる運命だと悟り
空っぽになったジョージアを握りつぶしたのさ その拳を掲げて


自由詩 劣等感のミント感 Copyright Neutral 2013-07-29 01:16:37
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