夕方ちかくの細い夜に
カマキリ

夕方の細い夜に逃げ出した心が帰らない

大したことはおこらない
丸い窓を持ち上げて

少し空気を入れ替えるような当たり前のこと

感慨深く、目を閉じているわけでもない
警戒が服を着たわたしの
かろうじてある矜持を飾り付けるだけ

手元にあるのは
触れ合った面積だけ
こすりあった鼻先だけ

身勝手な推測で誰も傷つけたくない
落とした刃をこっちに向けて
手紙が来ないことに胸を撫で下ろしている

それでも
夕方の細い夜に逃げ出した心が帰らない

大したものは持ってない
血の通った両手を強く、守っているだけ

夕方の細い夜に


自由詩 夕方ちかくの細い夜に Copyright カマキリ 2013-07-25 18:42:45
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