夜更かし
中原 那由多

切符が手から滑り落ちた
少しぼやけて見えたロータリー
そっと切符を拾い上げたら
時計も、柱も、電工掲示板も
一歩もそこから動いてはいなかった


月曜深夜の椅子取りゲーム
居心地の悪さと狸寝入り
廊下に立たされた生徒のように
視線は虚ろ、蝸牛の徒競走

週刊誌のページをぺらり、と
捲って、捲って、捲ったのなら

ベッドのない保健室へ行こう


あかぎれの手、上手に物を掴めない
靴の中に入った石ころ、笑う価値のない悪戯

三日月に薄い雲を被せては
くしゃみで吹き飛ばそうと躍起になった

小さな鍵穴、暗い廊下

真っ直ぐ歩くだけ
歩くだけ

自分自身に嗚呼、甘い



自由詩 夜更かし Copyright 中原 那由多 2013-07-23 02:43:39
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