アネモネ
中原 那由多

眺めているだけで満たされていた
モノクロ写真が色づくように 雪解け水が流れるように
チョコレイトの甘さに依存していた
苦い失敗を忘れるように 白い制服が汚れるように

後ろ髪引かれる君にさようなら
絡まった糸を解いてよ春風

届かない 渡せない 儚く散った花に
触れてみたら見えるでしょう アンソロジーは歪んでるんだ
巡り合わせに苛付いてもあの日の傷は癒えない
薬を飲むから水を頂戴


見つめていた先で聞こえる笑い声は
ガラス窓に落書きを増やしては 未来を隠して不安にさせた
繰り返すだけの他愛無い時間に
注がれたミルクをかき混ぜて 浮かんだ残像(けしき)に見とれてた

白い肌火照った君にさようなら
未完成の手紙を破いてよ春風

言えなかった 見えなかった 最後に咲いた花が
始まりの匂いだったら デイドリームは続いてたんだ
すれ違いと冷たい廊下と青春の1ページ
夕暮れのチャイムと消えた


恋は罪だと思ってしまったよ
陽だまりを探した朝の交差点
それでも幸せを願ってしまったよ
壊れるくらい


届かない 渡せない 儚く散った花に
触れてみたら見えるでしょう アンソロジーは歪んでるんだ
恐れないよ 怖くないよ あの壁を越えるだけ
希望の光が差している

アネモネが咲いているよ



自由詩 アネモネ Copyright 中原 那由多 2013-07-18 03:43:22
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