蝉スイッチ
佐東

夕方になっても
蝉が鳴きやまない

うちの玄関先にある蝉スイッチは
OFFにしといたはずなのに
いつの間にかONになっていた
(ヒグラシスイッチなら歓迎するけどクマやアブラは勘弁してほしい)

電柱の陰で
長い捕虫網を振りかざす
汗くさい ぼうず頭が
ぴこん と動いた
やつの仕業に違いない

荒田神社の境内にあるスイッチもONになっていたらしいと
市報を配りにきた中崎のおばさんについて来たまほちゃんが
みんみん汗をかきながら報せてくれた

まほちゃんの背中にうっすらと線のようなものが
えりあしから腰のあたりにかけて一直線にはいっている
今夜あたり羽化が始まるのだろうか
まだ水分の行き渡らないしわくちゃの拙い翅を月の光にかざしながら
真夏の青すぎる空に飛びこんでゆく夢でも見るのだろう

中崎さんたちは
しゃあしゃあ言いながら帰途につく
汗くさい ぼうず頭が後を追う
きっと
羽化の瞬間を狙っているに違いない

明日も暑いとおもう








自由詩 蝉スイッチ Copyright 佐東 2013-07-16 09:10:04
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