美しい村
ヒヤシンス


都会の喧騒から逃れるようにこの村へ来た、新たな道程。
久しく見なかった青い空は高く眩しい。
なんて清涼な空気、美しい山々の稜線。
私は自分の在るべき場所をようやく見つけた嬉しさに浸る。

人と人との快適な間隔、清々しい空間。今まで味わった事が無い。
初めの戸惑いはすぐに消え、歓喜で沸き返る胸を必死になだめる。
私はここに居て良いんだ。
あらゆるものが私の存在価値を認めてくれる。人も自然も。

私が本当に欲しかったのは自分自身の存在価値。
認めてもらいたい。褒めてもらいたい。
それは子供に帰る心とは違う。大人だからこそ、である。

人は誰でも自分の存在価値が見えなくなると不安になり、混乱する。
そして何かを見失う。ときには自分自身さえも。
しかしもうその心配はない。私は今、この美しい村に解放されたのだ。


自由詩 美しい村 Copyright ヒヤシンス 2013-07-13 23:01:47
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