さよならのこと
はるな


すぐにあしたになってしまう今日 は黒くて、生えている星はぬるい。あしたになったら手に入らない、それとか、夜のたべものとか。背中にはえていたのは、よろよろした壁 ・ だれもいないから、黒を白にしてもわらわれない。わらわれないけどそれがつらい。かなしいのはしっている。しっているのは何も。なにもかも、部屋にしたかった。覚えていることばすべてで飾って、きみにあげたかった。

わらわれても、だいじょうぶだった。でも夜がこないと、だめだった。わたしはカーテンがすきだった、それはゆれるもの、そして窓のためのもの。窓のためのものがほかにあったろうか。便所のあじのする酒をのんで、くちのうらにもあれが生えてくる。夜のあれ。
うそつきといわれても、あばずれといわれても、ひとでなしといわれても、だいじょうぶ。でも、あきらめたら、星はふらない。あきらめなくてもふらないかもしれない、星は、それを食べるとすぐにくちのうらに生えてくる。でもみえない。無意味がよかった。泣いたりして、無意味だとなおよかった。あやまる、あなたには、わかってほしかった。あなたっていうのは、全員のこと。すべてのこと。いままでみたり、さわったり、味わったり、わかれたりした、ぜんぶのこと。ごめんなさい、あなたにわかってもらいたくて、はしったり、さわったり、あじわったりした。でも鏡だったかもしれない。

なにもかも、きみにしたかった。おぼえていることばすべてで飾って、きみがどんなに傷つくとしても、かまわず、きみにあげたかった。うれしいことも、ひどいことも、ぜんぶきみにしたかった。腕があるから、指があるから、あいたかった。名前をおぼえたり、わすれたり、思いだしたり、そういうことの、ぜんぶを、ぜんぶとしたかった。



自由詩 さよならのこと Copyright はるな 2013-07-11 20:57:19
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