灰の中の目玉
ホロウ・シカエルボク





遠くへと叫ぶ声は、振り返る者を待つことはない、乾涸びた情熱でも、いつか灯る火種を隠しているのなら、持ち続けることは滑稽じゃない、お前の干からびた白骨は、お前自身の言葉で再生されるのを待っている、限りなく死滅に近い、臭いを、嗅ぎながら…へヴィー・メタル、ハード・ロック、インダストリアル・ノイズ、あらゆる刃物が身体の中を駆け巡っていく、切り刻んで、切り刻んで、切り刻んで、そら、嘘じゃない血脈を探せ、嘘じゃない血脈を探せよ、本当の血が流れてる場所がどこかにまだあるはずだぜ、保身のために吐いたホラのせいでお前は死に過ぎた、死に過ぎて、生きながらがらくただ、がらくたの存在は死滅しない、だから存在し続けてしまうぜ、そいつを燃やすには本当の血液が流れる場所が必要なんだ、お前はそれを探し続けなくちゃならない…食道から腕を突っ込んで胃袋あたりを探してみなよ、溶けずに残っているものがどこかにあるはずだぜ、そいつは正しい流れを阻害している、そいつは正しい流れを阻害しているんだ、そいつは正しい流れを阻害している―何故だか判るか?見つけてもらう必要があるからだ、異変を作りあげて、調べてもらう必要を演出しているのさ…見つけてもらわないことには話しにならないからねえ、お前を阻害することでお前に見つけてもらおうと画策しているのさ、腕を突っ込んでも見つけられないのなら、お前は身体を透明にして、そいつが点滅しているところを見つけ出さなければならない、どうにかしてそいつだけは見つけ出さないといけない、だってそいつは、お前にとって一番大事なことを隠し持っていやがるんだ、火種さ、ひとことで言うなら、そいつはお前の乾涸びた情熱を再び燃え上がらせる火種を持っていやがるんだから…人間の一生は進化を求めるのか?それとも築いてきたものの維持を求めるのか?そいつはどこかに決められなければいけないのか?判んないのかい、よう、判んないのかい―維持が成り立たないのなら進化だってあるはずがないじゃないか、遠くへと叫ぶ気持ちがあるのなら、振り返らなくても構わないぐらいに自分のしてきたことをしっかりと抱えていることだ、火事場泥棒のように欲深に抱え込んでいることだ、一つも落とさない覚悟でだ、覚悟だぜ、落とさないことが重要なわけじゃないぜ、火、火、火はどこで燃え上がるのか?火の意味を教えろ、火の意味を教えろよ、お前が燃えあがる為の…燃えあがらないことを美徳とするのならこんなものに手を出すべきじゃない、ええ、大人しく情報誌でも読んでいることだ、火、火、火は激しく燃え上がる、それが燃えあがる時の激しい風を、お前もまだ覚えているだろう、白けた顔をしてないでこっちに来いよ、もう一度胃袋の中に手を突っ込んでみなよ、ええ、消化されずに残っているものがきっとあるはずさ、お前を阻害するもの、お前を阻害するものの歪な形状を、お前を阻害するものの歪な表情を、お前を阻害するものの歪な能動を、お前はただ余すことなく記してみればいいのさ、記すことが重要なんじゃないぜ、記すなんてことにはなんの意味もないのさ、記してみるということが重要なのさ、それが試されるということが…まさか、それを抜きにして本物の血液が流れる場所を知ることが出来るなんて思っちゃいないだろう?腕を突っ込んでも何も見つからないのなら身体を透明にしてそいつが点滅しているところを見つけ出すんだ、そいつはお前に見つけてもらおうとして画策しているんだぜ、おいそれとは伝えられないものを落とさない覚悟でごまんと抱えていやがるんだぜ、覚悟だ、落とさないことが重要なわけじゃない、遠くへと叫びながら、お前の火が再び燃え上がるのを待っている、それはまるで凶暴な祈りだ、人死にが必要な祭りだ、首を刎ねろ、もちろんお前の首だ、祭壇に掲げろ、そして遠くへと叫べ、維持したまま、進化を始めるんだ、なにも落とさない覚悟で、乾涸びた白骨に新しい肉体を塗りつけろ、肉と血と臓腑の臭いでそいつを塗り潰してしまえ、それが生命だ、それが火種だ、それが、激しく燃え上がる火なのさ!






自由詩 灰の中の目玉 Copyright ホロウ・シカエルボク 2013-07-10 23:43:37
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