たのしい生物
yuez

プレゼントの花束には毒が入っていました
「いいかい。これはバラという樹の生殖器だ。植物の涙ぐましい進化の歴史さ」
彼の長い舌はまるで昆虫の吻のようでもありました
「いひひひ」

プレゼントの小瓶には星の砂が入っていました
「ごらん。この砂の正体は虫の死骸だ」
ギャッと叫んで私は小瓶を放り投げちゃいました

ある夜 満天の星空の下で男は唐突に屁をひり出したのです
「ねえ、あなたって人はなんだって平気でデート中に屁なんてこけるのかしら」
私は耐えかねて思わず聞いちゃいました
「イタチはプロポーズするとき、すごく臭いオナラをするんだよ。知らないの君」
「…え」
うろたえている私をよそに男は続けました
「僕らが今こうして見上げているあの星だってガスで出来ているじゃないか」
男は真顔でそう力説しながらまた快活に放屁したのでした

ああ ああ
できるものならラベルに"ミスター・ナンセンス"と記した標本箱へ男を足蹴でぶち込んでやりたい
「こんな二人に恋などできっこないのだわ」
がっくりと肩を落とした私がそうつぶやくと男は大笑いして言うのでした
「君ときたら本当何一つわかっちゃいないのだね!」



自由詩 たのしい生物 Copyright yuez 2013-07-09 11:29:14
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