汚された美しき伝説
ヒヤシンス


銀色の夜空に青い蝶が舞う。
夢色の花束を抱えた男が待ちくたびれて黄色い吐息を漏らす。
愛を孕んだ白い月から茶色い影が覗く。
訝しがる男にあきらめの色が重なってゆく。

蟇の戯れる川辺に星が降る。
謝肉祭と勘違いをしている太った女が小さな木馬に乗って現れる。
高鳴る胸の鼓動に木馬が揺れる。
待ち合わせ時間をとうに超えてなお男を探し求める赤毛の女。

花束はとうに朽ち、夜空は鉛色に変色する。(青い蝶はどこへいった?)
胸苦しさを必死にこらえ、目には涙を浮かべている。
それでも男は女を待ち続ける。淡い期待を抱きながら。

そのとき木馬の女がやってきた。軽やかに、揺れながら。
蟇の鳴く川のほとりで、男と女がすれ違う。互いに目も合わさずに。
年に一度の美しい伝説を汚すまいと光り輝く高貴な雲が天を覆う。


自由詩 汚された美しき伝説 Copyright ヒヤシンス 2013-07-07 21:11:52
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