僕とオートバイと夏
梅昆布茶


僕とオートバイの夏

焼け付くアスファルト 微かな白煙とオイルの匂い それが僕の青春だった
見上げた空には星が無く ただどんよりと地上の光を映していた

アクセルを開けると世界がスリップし始める まるで言い訳がましい友達みたいに
おふくろが説教を始める前にとにかく逃げ出したかったんだ 闇を裂いてね

時にはテントとシュラフとオートバイだけが僕の世界だった 夢も見れない街を離れて
高原の風と光に会いにゆく まるで恋人と逢引するかのように 夢のように

高原へ続く道は白樺の林や 名も知らぬ花が散りばめられて
おだやかな勾配で 高みへ登ってゆく 空と光と風の神話の世界へ

或いは灯台へ続く道を走る 潮風が胸を満たす まるで故郷へ帰るように
遠く島が見える 彼女の島だ そこには懐かしい風景がある

僕とオートバイの夏の匂いが僕をみたしてゆく そういつもの夏だ
暑くて孤独な夏がまたやってくるのさ

僕は一筋の排煙を残して またあの空に駆け登って行くんだ
そんな僕とオートバイの夏なんだ


自由詩 僕とオートバイと夏 Copyright 梅昆布茶 2013-07-06 18:22:12
notebook Home