玉葱なひと
たま
乾いてる軒下暮らし梅雨の日もそれが定めとうな垂れて
ほんとうに美しい玉葱の芯どうしてもほら泣いてしまいます
玉葱の玉を採ったら葱だらけでもそれは夢
二兎
(
にと
)
を追うひと
玉葱の芯に隠れて冬の夢凍てついたまま凍てついた夏
この
星
(
ひと
)
にしがみつくなら玉葱の針のような根アザラシの髭
玉葱の身を剥くひとはいませんか蚊帳に隠れて泣きたい夜に
どうしても言えません刃を落とすのはあたしの情け憎いだなんて
あなたはいつも食べるだけ涙見せても笑うだけだから男ね
九条の葱に憧れたあんなに細く色っぽく八百屋の軒で
一度でいいのバーベキュー海辺のようなベランダで茄子はいらない
陽だまりの芯は凍えてくしゃみするそんなあなたは玉葱なひと
幾重にも芯を閉ざした玉葱のあたしに似てる
陰
(
ほと
)
のかたちは
あたしたち長い日が好きネギ属の白夜の下で夢語るひと
薄いのは薄情だねって言うけれど皮で染めたの黄色いハンカチ
思いきり刻んで炒って殺してもカレーライスはあなたの味方
今朝の夢肉じゃがになるパパママこの子鍋の底まあるいお腹
玉葱の嘘聴くたびに泣くほんとはねどこにもないの芯なんて
短歌
玉葱なひと
Copyright
たま
2013-06-29 09:04:37
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