谷中日和  
服部 剛

谷中ぎんざの通りには 
石段に腰を下ろした 
紫の髪のお婆さんが 
せんべいを割り 
群がる鳩に蒔いていた。 

向かいの屋台は 
木の玩具屋で、おじさんは
「ほれっ」とベーゴマを  
巻いた糸から台の上に、放ち  
野球帽の少年に手本を見せた。 

今は亡きちいたけおさんが 
旨そうにメンチをほおばる
写真のある店で 
僕もメンチをほおばりつつ 
色々な店で人の賑わう 
谷中ぎんざを、ゆっくり歩く。 

遠くから、喪服姿の青年と 
遺影を両手に持つ父親の 
不思議なほど日に照らされた 
親子三代のほほえみが 
僕の傍らを通りすぎていった。 








自由詩 谷中日和   Copyright 服部 剛 2013-06-24 21:30:56
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