納豆への手紙
りゅうのあくび

前略

 朝食に納豆が出てくると君の少年時代のことをいつも思い出します。君は小学生のころ冷静なまなざしで、何についても黙々と何もしゃべらず、周りのことを常に察している性格でしたね。だからかなぜか、友人も多く、同じ性格のちょうど粒ぞろいやつらがいっぱいいました。今ではスーパーの発酵食品売り場でしか見かけませんが、君は、確かに二十五年前小学校の頃、一学年上の先輩でした。或る日、事件は起きました。僕のいたずら好きのクラスメートが、先輩にもかかわらず君のことを納豆とよんでは、逃げ回っていました。
 
 納豆と呼ばれては、すぐにそのクラスメートを追いかけていった君を思い出します。中学生になってから、君は中学校でヤンキーの番長として君臨していましたね。まさか、納豆と呼んで逃げ回っていたクラスメートは、君が番長に就任することはわかっていなかったでしょう。番長になってからの君はまだ、そのことを覚えていて、執拗に同じクラスメートだった少年を探していたことを僕は知っています。そのクラスメートは、中学校時代にいつも納豆に追われているとこぼしていました。
 
 できれば、もう許してあげてください。納豆を食べるときには君のことがふと懐かしくなります。最後になりますが、今朝の朝食では、納豆を食べました。ちなみに僕は納豆が好きです。

                                  
                                     草々



自由詩 納豆への手紙 Copyright りゅうのあくび 2013-06-23 16:27:33
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