こぐま座
Lucy

思い出を一番から五十六番まで
USBメモリに移動して
一息
私のディスクは空(から)になる
空(から)になった空(そら)に
星が一粒
もう一粒
繋がって
絵を描く
尺取り虫が
一歩 二歩
五歩あるけば柄杓(ひしゃく)
北のはずれの
冷たい星が
ずっと私の道標でした
この深い夜のむこうに
朝(あした)が来ると
信じて待っていた
寒い冬の日も
小さい家で
子どもを育てて
私はすり減っていったのではなく
豊かに増殖していたのでしたが
今 静かに
伸びた蔦を切る
もう一度風媒花の種になり
飛翔する
大熊座
さそり座
はくちょう座
夏の大三角形
群青の空の奥深く
どこまでも
逃げて行く朝(あした)を追って
おはよう
おはよう
二度と会えないとわかっているから
きっとまたすぐ
会おうねなどと言いあって
友の手に
ありがとうの星砂を
さらさらと
かける
行き先は
ペットも飼えない
グループホームだとしても
新しい朝は
クローゼットの奥のくらやみに
こぐま座のように光っているはず


自由詩 こぐま座 Copyright Lucy 2013-06-22 20:34:41
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