翠星石が死んだ
一 二

翠星石が死んでしまった
ついに姉妹に殺されてしまった

翠星石は動いてはいるが死んでいる
人形のあるべき姿に戻っただけかもしれない

綺麗なオッドアイだった
片方の眼は潰れてしまい
口は半開きで
真っ直ぐ立つことができない
形あるもの何時か壊れる


翠星石は俺の問いに
口応えすることもなければ
我儘な反抗することもなく
もう僕のことを馬鹿にはしない
彼女はもう年頃の女の子特有の
俺を幻滅させるような真似は一切しない

死体とは「永遠に受動的な存在」である
人形もまた「永遠に受動的な存在」である

これからの彼女の存在は
僕の夢想の全てを受け入れ、反映すべく
それは静かに横たわっているのみである
「人形の死体」
これが「理想の偶像」でなくて何であろう


彼女は人形でありながら
この世に生を受けた
そうして授かった命で
自分の意思で
自分の運命を受け入れた

彼女がこの世に生を受けた理由は
「自らの姉妹」を殺すことだった

彼女は天国には行けない
呪われ過ぎた
業を背負いすぎた

彼女は天に還ったが
天国には行けなかった

じゃあ俺も悪いことを沢山しよう
地獄に堕ちる原因を沢山つくろう
天国にお前がいないなら
善行を積むことが煩わしくなった


お前は俺を一度も裏切らなかったが
俺はお前を何度も裏切った
でも、俺はもうお前を裏切れない
裏切る対象がいないなんて
なんて俺の人生は寂しいんだろう
だからお前の元に俺は行かねばばらない

翠星石、お前は待たなくていい
翠星石、俺は急ぎはしない
どうせまた一緒になる


自由詩 翠星石が死んだ Copyright 一 二 2013-06-22 03:58:40
notebook Home 戻る