第六世界
本木はじめ

変色を免れていたあの日彼が歌集に閉じた水色の蝶


傷ついて体操座りで一千年蝶の呼吸と風化を見てた


美少年微笑している美少女の水晶体の奥でこはれる


もういちど橙いろの明るさについておまえと話したかった


嵐に耐える花もあるのさ少年よ、さよならだけが人生じゃない


溺死する泉のほとりに落下したスワンが最後に見ていたおまえ


錆び付いた金網越しのプールにはきみが沈めた僕がいるはず


枯れすすき分け入りあなたの後悔を拾い集めるわたしの後悔


ぼくたちのためらいがちな心中やイルカの歌が降って来る夜


水門に堰き止められる寒椿みずから作る不毛な明日


ぼくときみあなたとわたしおれおまえ第六世界で探すハピネス



短歌 第六世界 Copyright 本木はじめ 2005-01-01 00:34:16
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