空梅雨に台風。
元親 ミッド

6月

明日には台風がやってくるという夕暮れ

空は壮大なるオーケストラを響かせ

そこに波乱万丈のオペラ劇が展開された。



夕闇の町並みは、息をのむ観客のように空に釘付け

西の彼方から夕焼けのスポットライトが照射され

そうしてついに最大の見せ場が近づいている。



台風の来る、明日の幕は

いよいよ、主人公が観衆の前で

その首を刎ねられるシーンだ。



リアルな感じを伝える為に

実際に、本当に、あの役者さんの首を

重そうなあの大きな斧で、切り落とすのだという。



嘆きの人

雄叫びの人

頭を掻き毟り

世界の断末魔を聞け。



そうして僕は、地脈の龍が

緩やかな軋みをたてながら

音もなき怒りを蓄えるのを聞いて

ただ、ぞっとするしかできなかった。



翌日滅びの帳は突然に下りてきて

星の途絶えた夜

鼻の曲がりそうな臭いの濁流をもって

独りの男は夢の中で死んだ。



素数の出現にも、法則は有って

人はその答えがわからずにいたけれど

或る日突然にその正体を知った時には

もう遅い。



愕然とする夢物語に

人は否応もなく覚悟するしかないのだ。



覚悟せよ。

人というものの脆さを。

そして、死ぬることの意味と

死に華の散華するのを、とくと見るがいい。


自由詩 空梅雨に台風。 Copyright 元親 ミッド 2013-06-11 20:44:53
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