誰も知らない大陸
水瀬游

這ってでも掴みに行こう この星の自転をいつか全てこの手に

勝利への道はどれほど短くとも サンディエゴからニューヨークまで

釈迦牟尼の手のひらでない非情なる土地でもバレエ・ダンサーであれ

この町の地図ではなかった少年の頃に父から貰った地図は

ゴワゴワの毛並みに萎びた筋肉の獣も牙はまだ研いでいる

石となり土には帰れなかった者 大地の下でまだ飢えている

「身を切る」と言う修道女 文字通り祭壇にその肉が置かれる

勝利への道はどれほど長くとも 決意してから六秒以内

あの虹を渡って君に会いに行く 罰と呪いを届けるために

思い出の日の深淵より宿命は来たる 蹄の音を響かせ

振り向かずしじまの道をただ行けばいつか故郷に辿り着くのか

はらからの血は金となり銀となる 宝を抱え残された一人

ひとりでに胸へ食い込む五寸釘 あなたをここに留めるための

復讐の種なら最も冷え切った氷の上で萌芽するやも

自らの細胞すらも捨てずには生きられぬのに まして意地など

魂が無数にあれば悪魔との取引などはいともたやすい
 
神話から一人密かに抜け出して誰も知らない大陸を往く

失って初めて気づくそんなもの元より持ってなかったことに

行先は支配の果てへ変更だ 悲惨の道を右手へ折れる

天国も蓮咲く浄土も大敗の焦土もあまねく 世界はひとつ

この星の自転速度がズレること 知った女神の笑顔が消えた
 
勝利への答えは遥かな遠回り 出会いの時(LESSON1)に立ち返ること
 
旅人の行き着くところ いずれ皆 空の柩を終点として
 
新たなる世界の初め 君こそは未知と謎とに立ち向かう者




※「ジョジョの奇妙な冒険」第七部「スティールボールラン」をイメージした連作24首です。


短歌 誰も知らない大陸 Copyright 水瀬游 2013-06-09 23:50:52
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