ヒヤシンス


小雨の薔薇園で僕等は無口だった。
黒いタートルネックを着た君の胸の上で、銀色のペンダントがアンニュイな微風に
揺れている。
君の横顔はいつか見た外人墓地のマリア像のように白く透き通っていた。

ときに恋とは耐え忍ぶものだった。
今しがた聞いた別れの言葉は、ピアノの旋律のようにくっきりと僕の胸に刻まれた。
人を恋する心とは・・・。
悲しみはゆっくりと透明な雨の中に溶けていった。

別れの場所として、小雨の薔薇園は美しすぎる。
そして残酷すぎる。
言葉など必要なかったのに・・・。

僕等は今を生きている。そして常に明日を見つめて生きてゆかなければならない。
しかし今この時はもう少しこのまま小雨に濡れながら薔薇達を見ていたい。そして、
透き通った君の頬にきらりと流れるものを。マリアのような白くて美しい君の横顔を・・・。


自由詩Copyright ヒヤシンス 2013-05-28 04:28:30
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