熱情
ヒヤシンス


一体、いくつもの衣を脱ぎ捨てれば、立派な大人になれるのだろう。
一体、どのくらいの時を費やせば、立派な大人になれるのだろう。
一体、幾人もの愛する者と夜を共にすれば、立派な大人になり得るのだろう。
去る者は去り、過ぎ行くものは過ぎ、もはや欲望を満たすものは無くなった。

蝋燭のともしびに投影された熱情。
去って行った者に対する慕情。
そんなものは・・・。
掌に線香の燃え尽きた灰を塗り付ける。

この身にほんの少しでも熱情というものが残っているならば、
私は詠おう。
青年期の甘い恋情と立派な大人へのあこがれを。

脱皮を繰り返せば立派な大人になれるなんて幻想はとうに捨てた。
しかしこの錆びれた我が身にほんの少しでも熱情の炎が燃えさかっているならば・・・。
今からでも遅いということはないのであろう。


自由詩 熱情 Copyright ヒヤシンス 2013-05-28 04:26:46
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