たくさんの独り言。
まーつん
…セックスは…正直、するよりも見る方が楽しい。若い頃、最初にした経験がトラウマになっている。恋人とのセックスで、まるで冷たい泥の中に生殖器を突っ込んだような感触を味わった。僕の手の内で悶える、彼女の身体は冷え切っていた。まるで柔らかい人形のように。
…僕に限って言えば、言葉が自分の伝えたいことの意味を正しく捕まえたことなんてほとんどない。鵜飼が夜の海に向かって鵜を放つように、思考の海に向かって言葉を放つ。すると、言葉は狙っていたのとは別の魚を捕まえてくる。しょうがなくぼくは不本意ながらも、その魚を読者に食べてもらう。伝えたい味わいは、本当はそれではないのに。しかし全くかけ離れているというわけでもない。
…雲は流れていて、いつも手が届かないところにいる。美しいものは、遠い所にいる時、一番美しく見えるみたいだ。水は手に掬い取ると色をなくすが、海に還すと、豊かな表情を取り戻す。
…君はグロテスクなまでに自分をさらけ出す。命は美しいが、命を宿す物体はいつも代償としての苦痛をその表情に滲ませる。周りの目に触れさせたがっているみたい。
…私はあなたであり、あなたは私であるという言葉は多分正しい。一つの全体の中の異なった二つの部分。お互いが同じである必要はないし、同じだったらおかしい。人の身体に全く同じ部品が二か所あるだろうか。多分ないと思う。
以下、たくさんの独り言。
愛って、違いを喜べる心だと思う。
苦痛をやり過ごすには、今を楽しむこと。
血は温かいが、身体から出るとすぐに冷たくなる。
僕の歩く道の表面は,なんであんなにざらざらしているのだろう。
人の声よりも、小石や雑草の声を聞いてみたい。
うるさいのは嫌い、静けさは怖い。
世界が美しくいてくれるから、僕は好きなだけ汚れることが出来る。
火に身体をくべれば、心が燃えるだろうか。
空が笑いだすと、耳をふさぎたくなるよ。
道具に罪はない。だけど道具には、何の権利もない。
心臓が止まるまで頑張れるだろうか。ばかげている気もするけど。
無我夢中で、愛想を振りまく余裕なんてない。
安全だと思えば、安全だ。
安全だと思えなくても、安全なうちは安全だ。安心できたかい?
いいパンチでも一発貰わない限り、目が覚めないだろうな。
随分長いこと、日差しにご無沙汰している。
夜は長い海だ。
人と違うからこそ、自分を主張する意義が生まれる。
だって自分のために、同じ本を何冊も欲しがる人がいるだろうか?