五月/短詩群
佐東


「目の前は、海。」

青の端で青を聴く
潮だまり おどる魚影 水をよぶ銀鱗

目をとじて
うまれたばかりの水をくぐる
五月のさきにある
海の縁で





「あおあらし。」

土からうまれた子どもたちが
にょきにょきと遊んでいる
ときおり
ざあーー

強い平仮名が かけ抜けてゆく

銀色のベールを
頭から すっぽり被る
もうじき
美しい 雨の季節






「五月、夜。」

あくびを一つ
かみころす
喪服を着た五月たち
通りすぎてゆく
みどりの影を追いこして





「雨の花。」

切りとられた
耳の
無数の
ざわめきの
あふれかえる
空のように
名づけられた
ひるがえる



立ちどまる雨の
縁どりに添う
夏の
やって来る方角を
ひそやかに
見つめている







自由詩 五月/短詩群 Copyright 佐東 2013-05-08 13:22:44
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