それも大事な部屋だから傷は付けたくないと思うんだけど
えぬこ
この悲しみの部屋には
今も絶え間無く水が注がれ続けて
この部屋の体積を埋めていく
だのにきみは一向にドアを開けてはくれない
内開きのこのドアは
こちらから体当たりしてもそうやすやすとは開いてくれない
そして
漸くきみがドアを開けてくれる気になったとき
もうそのドアは水圧で開きはしないのだ
この部屋に窓があるなら割って
きみの手にドリルがあるなら壁を壊して
ここから出して欲しい
しかし
例えそうしてこの部屋から出られたとして
修復されるかわからぬ穴を抱えた悲しみの部屋を
僕は何時も尻目に懸け生きていくのだ