幻惑
ハスイ リョウ

光があるところ、彼は進んだ
辺りには、暗闇が拡がっていた
彼の呼吸は闇を照らしていた
しかし、彼は気づく
なんたるや徒労であるか
彼の気づきは彼自身を苦しめ、
更に照らされた闇はまた辺りを暗くし始めて
彼は無限と肉体を吐き出した

ああ、子供達よ、出てしまったのか
何もないここへ出てしまったのか
血が滾るまでの間、精神が先鋭になっていく間
お前達は今を祝福することだろう
確かに私たちは
尊大な心から産まれてきた同士である
しかし子供達よ
さながら、老いて先立たれ一人になるもののように気づくのだ
運命に基づく仕打ちを
それは私たちを辱しめるだろう
老いも若きもないことを老いて気づくのだ
肉体の綻び、精神の荒み
それは表面的な現象にすぎない
お前は死を十二分に広げた使命に気づくだろう
お前は望みの限りを尽くした勝利者に自殺の枕を渡すことになる
私はお前達とは違い困惑しているのだ
お前達をこの両手で抱き締めたい
だがそれはできないのだ
だから、困惑している
さあ、私が迷う間、行ってしまうがよい
私は育った力を行使して波紋を起こすくらいしかできないのだ

子供達は
自在に飛び回り
彼は取り残されていた
子供達の喜び顔は彼にとって苦痛であった


自由詩 幻惑 Copyright ハスイ リョウ 2013-05-04 19:04:40
notebook Home 戻る  過去 未来