願い
アンテ


とにかく暑くて
冷蔵庫のなかは空っぽで
喉がカラカラで
唾も出てこなかった
汗だくのまま
床に寝転がっていると
空っぽのペットボトルが
部屋のすみに転がっているのを見つけた
拾い上げてみると
中にペットボトルの精がいて
「ひとつだけ願いを叶えてあげましょう」
精は大げさに両腕を広げた
考えるまでもなく
よく冷えたお茶をお願いすると
ペットボトルの中にお茶が充満して
キャップを開ける間もなく
ペットボトルの精は溺れ死んでしまった
お茶はとても冷えていて
持つ手がひんやりと冷たかった
ペットボトルの精の死体が
ぷかぷかと浮かんでいた



自由詩 願い Copyright アンテ 2003-10-29 01:31:15
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