使者 (充電池切れの為に)
アラガイs
どこまで脳漿を吸いとられたら気がすむのか
黄ばんだ朧気を引き連れて男は歩いている。
水色のペットボトルと大きな菓子箱を2つ置くと、若者は知らんぷりを装いながら携帯をじっと眺めていた 。 男がドアから入って来るのを伺う気すらない。しかし何かに怯えているのは確かだった。まるまると太ったこの若者の眼鏡の底は、一瞬キラリと鈍い光を放ってみえた。
いつもは暇な時間帯に珍しく客が並んでいたりする。
この男のまわりでは流れていた空気も違う方向へ逆流を開始する。取り立てて威圧的なわけではない。不可解な磁気が何故か意思とは無関係に他人を引き付けてしまう。引き付けられたものは自意識を超えてただよう。燐の熱を帯び危うさを醸し出すのだ。いつもの決まり事のように。
若い母子連れの後ろにそっと控えた 。
女の子は男の方を見つめては目が合うとまた母親の横に隠れる。
その度に女の子は小さな両手をいっぱいに拡げて母親の腰にすがり付いた。
(僕は気がぶれているのか?)
子供の神経は獣だ。何か異様な気配を感じているのだろう
若者が店を出て行くと母親のやわらかな胸が緊張で強張った。
引き連れているものが何なのか彼にはほとんど理解できていた。
思いつめれば自分だけが苦しんでいるような気さえしていた。
できるだけ宇宙の事だけを考えるようにしようか
現実的には途切れることのないセックスの事を
要するに快楽に溺れながらも何故か楽しめないでいる自分をもっと大切にしようと
それがたとえひとでなしのような生き方でも
苦しみから逃れること
それがけっして最良な生き方ではないとわかっていること
邪魔になってきた
(彼は気がぶれてはいない)
では銀河を渦巻くその目的とは一体何なのか
刺激的な出逢いとは
これが異種と混合との交わりを楽しめるものだけに許された快楽なら
追求するものは
果たしてH教授の電波望遠鏡は新しい銀河の衛星を捉えたのだろうか。
はじめて出逢う彼女との交わりは刺激的には違いない。
もっとも知りすぎることは無意味だと、彼は自分のことを考え続けている
どこかで呪縛から逃れなければならなかった。
逆さまに張り付いた1.97?の円盤を眺めるのはとても気持ちがいいのと
僕のみつめる世界はあまりにも小さすぎて彼女たちの魅力のすべてを未だに知らないのと
追いつめられているもの
存在する
携帯
無縁と果てしなく
近い場所
まだ改名されない
充電池不良の為 (つづく)
邪魔な 。