戯曲「ノーパンガール」(習作つづき10後半その1)
星☆風馬

、、、つづき

せむし「与志のじいさまも聖子のばあさまも死んだらしいの」
龍児 「もうだいぶ前に死によった。最後の60回忌が終わったのが5、60年前じゃなかかね」
せむし「ほー、もう100年以上かの」
龍児 「聖子ばあさまが死んだらじいさまもすぐにぽっくら逝ったがよ」
奈津 「ばあさまが死んだらやることなくなったんやろな。あの世まで追っかけていってからに。じいさまの変態は死ぬまで変わらんかったの」
龍児 「ありゃ、死んでも変わらん。まだまだエロやりよらすじゃろ」
奈津 「龍児さんや、渚さんもようやっと結婚しなさるがよ」
龍児 「ほー、結婚な」
せむし「いんやー、結婚ではなか。彼女じゃき。セックスして子供をば生もうと思っとる」
龍児 「かー、あんたは世界中にどんだけ種仕込んだら気がすむんかの。子は何人おるんじゃ?」
せむし「50から先は憶えちゃおらんの」
龍児 「ぜんぶほっぱらかしか?」
せむし「子は勝手に育つからの」
奈津 「ええ風が吹いとりますの、今日は」
龍児 「なんじゃ?誰ぞ呼びよったか」
奈津 「あんたが喋るけんじゃろ」

電車のベル、ジリリリリリ、キンコンキンコン
駅の場内放送「銀河鉄道ギルガメッシュ666(ミロク)アマデウス発ソル・シティー行き快速到着。15分停車ののち出発進行予定。降車の際は忘れ物がないように。発車までしばらくお待ち下さい」

父、母登場、手をつないでいる

母  「ああ、いい風ね。気持ちいい」
父  「やっぱり地球がいちばんだね」
母  「そうね、すばらしい星」
父  「故郷だからね。その服、似合ってるよ」
母  「そう?ありがとう。でも、このスカート少し短かすぎない?」
父  「そんなことないと思うよ。冥王星の店長も言ってたじゃないか。それ、これから銀河宇宙で大流行するんだって。ぜったいナウいよ」
母  「本当?でも、こんなマイクロミニのプリーツ、風が吹いたらお尻が丸見えよ」
父  「風が吹かなくてもぼくがめくれば丸見えさ(父、母のスカートをめくる)」
母  「いやん、もう、バカ。与志さん、今日はわたし、ノーパンなのよ」
父  「せっかくのノーパンデートの日なんだからスカートぐらいめくらせてくれよ」
母  「パンティーはいてても与志さんがすぐに脱がしちゃうからいっつもノーパンデートじゃないのよ。たまにはパンティーデートしてくれてもいいのに」
父  「これからはノーパンデートがトレンドなのさ」
母  「どんなに可愛いパンティーはいてても、脱がされるのね」
父  「うむ、君のパンティーを脱がすのがぼくの生きがいだ」
母  「どうしてもやっぱりノーパンにされるのね」
父  「うむ。冥王星は不思議な星だったね」
母  「ええ、とっても不思議な星」
父  「衛星カロンと重力を引っ張りあって、ジェミニ回転しながら太陽系を斜めに楕円公転」
母  「あなたの重力に引かれてわたしはくるくる回ってる。与志さん、いつまでもわたしを離さないで」
父  「君の引力とぼくの引力、中心は2つある。だから楕円になるんだな。不安定な緊張が楕円という均衡を生む。だったら、公転軌道が斜めにずれて他の惑星と全く違っているのはなぜなのか。他の惑星は太陽が生んだ星。冥王星は太陽が拾った星。銀河の果てから飛来して太陽系の一部になった異質星。冥界の王、プルート。暗黒の破壊星(せい)。彼らの故郷はあの軌道平面上のどこかにあるはずだ。外からやってきた異邦の星は異界からの使者。社会の異分子が社会に無意識の反乱をもたらす如く、冥界の王は太陽系の星々に影響を与えつづける」
母  「山羊座宮をゆっくり進んでいる冥王星。あらゆる権威をなぎ倒しながら突き進むのね。あなたもわたしも社会の反乱分子。もう冥界にとりつかれてしまってる」
父  「破壊の果てに再生が始まる。ひげを生やした長老たちが新しい時代を告げてるよ」
母  「あら、カタツムリつかまえてるの?」
女2 「うん(うなづく)」
母  「いっぱいつかまえたね」
女2 「うん(うなづく)」
母  「知ってる?カタツムリって脱皮するのよ」
女2 「知ってるよ。ヘビの抜け殻みたいに薄い渦巻きがズルって外れるんだよ」
母  「そう。その渦巻き10個集めたら運命の人に出会えるわ、本当よ」
女2 「ヘビの抜け殻もカタツムリの抜け殻もいっぱい集めてるよ」
母  「だったら、あなたにはたくさん運命が集まってくるね」
女2 「運命?」
母  「そう、運命。あなたにはたくさんの運命が集まってくる、集まってくる、集まってくる、、、」
父  「聖子、そろそろ時間じゃないのか?」
母  「そう、じゃ、行きましょう。さようなら。あなたにこれをあげる。龍のウロコ(女2に渡す)。触ったら龍が暴れだすから誰も触れない龍の逆鱗。あなたにあげる。さわったらお腹の龍が暴れだすから誰も触れない龍の逆鱗。きっとあなたの宝物。さようなら」
父  「さようなら、可愛いお嬢さん」

父、母、手をつなぎ退場
電車のベル、ジリリリリリ、キンコンキンコン
駅の場内放送「銀河鉄道ギルガメッシュ666(ミロク)アマデウス発ソル・シティ行き快速、定刻発車予定。間もなく出発の時刻です。パスポート及び乗車券確認のため只今より車掌が巡回致しますから乗客の皆さまはご協力を」

、、、つづく


散文(批評随筆小説等) 戯曲「ノーパンガール」(習作つづき10後半その1) Copyright 星☆風馬 2013-04-28 19:24:28
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