メルヘン・オブ・ザ・リビングデッド
ゴースト(無月野青馬)

ちびまる子ちゃんを観てても
ちっとも平和にならないことも
平和通りとかも
ちっとも平和にならないことも
はぐれても
助けてもらえないことも
あれやこれやが歪みでも
ヒステリックになってはいけないのです
全能ではなくても
しなければいけないこともあるのです
言うなればそれは
斜視です
視界がぼやける周縁です
でもですね
其処に巣くっているのです
其処がメルヘンランドなのです
其処には
ヘンゼルもグレーテルも居て
魔女も居て
お菓子の家がちゃんとあって
夢の世界なのです
竈には
何時までも何時までも燃えている魔女が納まっているのです
其処が左側だとしたら
右側には何が来るのかと言えば
来るものはゾンビばかりなので困っています
犬もゾンビですし
看護師もゾンビですし
警察官もゾンビですし
とてもじゃないけれど
お花見なんて出来ません
手持ち花火でも遊べません
ゾンビは燃えているものを見ると異様に興奮するからです
春に運動会を行う学校も多くなってきたそうですが
あまりお薦め出来ません
ゾンビが乱入して来るかもしれないし
実は既にゾンビが混ざっているかもしれないからです
最近のゾンビはかなり脚が早いですから
とてもじゃないけれど
太刀打ち出来ません
体育教師でもお手上げでしょうから
お薦め出来ません
あと
シアターなどでの観劇もあまりお薦めしません
ゾンビが受付嬢かもしれないですし
ゾンビが助演しているかもしれませんし
客席に座っているのがゾンビカップルかもしれないからです
それと
無料でも施設内のお茶類は飲まない方がいいかもしれません
ゾンビウイルスが混入しているかもしれないからです
私の目が映すものの中に
ゾンビは潜んでいることがあるのです
フラッシュモブなんかしたら
儀式になってしまって
危険だと思います
右側と左側が共存してしまって
私はとても困るでしょう
でも
他人がどうなろうが構わないのがゾンビですから
きっと私は
八つ裂きにされてしまうでしょう
私は出来るだけ
左側に居ようと思っています
逃げ込んだ場所が嗅ぎ付かれるまでは
左側に居ようと思います
其処はメルヘンランドですから
考え方次第で幾らでも愉しめるような気がします
考え方次第で幾らでも生き延びられるような気がします
私の首が胴体から離れるまで
私の首が自立している間
私はどうすれば
人の世に再来することが出来るのか
逆に
どうすれば別の時空に飛び移ることが出来るのかを考えるでしょう
何事にも間に合わないということなどはないと思えなくなるまで
紫色の手にシャットアウトされてしまうまで
粘ってしまうでしょう
其処でそうして
粘ってしまうから
それでゾンビになってしまうのでしょう
粘り気にはゾンビパウダーが
空間を侵食するパウダースノーの塊から
ゾンビパウダーが
標的を求めて伸びて来るのです
希望は気球のよう
鈍いのです
絶望はコンコルドのよう
速いのです
それに高いのです
的確過ぎるのです
大気中を循環しているパウダースノーの塊は
乱高下をしながら
ハゲタカのように旋回して
常に狙いを定めていて
幾ら逃れても逃れても
追いかけて来るのです
ハゲタカのようなゾンビパウダーも生き延びる為に必死なのでしょう
絶望も絶望させる為に必死なのかもしれません
空気清浄機は
機能していませんが
私は吸うのです
生きていく為に
清浄ではない空気でも
吸うのです
生きていく為に
私達は
そうして
大量のゾンビパウダーを吸引して
排気して
後始末はしないで
散らかしたまま
白けてしまうでしょう
鼻からも吸うでしょう
子供にも吸わせていて
子供からも吸っているのです
ですから
このようなメルヘンランドは
滅びないと思います
滅べないと思います
ゾンビが増え続けているからです
砂漠も増えているからです
今日だって何処かで
ヘンゼルとグレーテルのように
親に捨てられてしまう子供が存在していて
ヘンゼルとグレーテルのように
彷徨って
お菓子の家を見付けているかもしれないのです
そのような感覚を齎す
メルヘンランドを強固に存在させる為に
ゾンビは徘徊しているのです
考え方次第で幾らでも生き延びられるように
メルヘンランドを強固に定着させておくのです
早くしなければ
若い内でなければ危ういのです
ハゲタカのようなゾンビパウダーが旋回しているのです
ゾンビは乱入するのです
ゾンビはコンコルドにも乗っています
ゾンビのダッシュ力は並大抵ではありません
無料のお茶類は飲んではいけません
耳をそばだてて
毛細血管をそばだてて
左側をキープしながら
私は
地の上を這います
他力本願です
それで結構です
巻き上がるゾンビパウダーを見ながら
私は思うのです
私には何もかも足りなかったと
悔しくて堪らないから
今度
メルヘンランドが巡って来たら
こっそりと
竈から魔女を助け出してしまおうと
私は思っているのです




自由詩 メルヘン・オブ・ザ・リビングデッド Copyright ゴースト(無月野青馬) 2013-04-22 05:03:49
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