カワグチタケシ

*
国際宇宙ステーションが
きぼうを乗せて
日没の名残を反射しながら
海峡の上空を通過していく

その光を楕円のプールで
滑らかな背中をひねり
口元に笑みを浮かべて
スナメリが見上げている

埠頭から二十分
寝不足の恋人たちを乗せた高速船が
海底ケーブルの上を通過する

ケーブルの先端から
君の名を呼ぶ声が聞こえる
その声で君は自由になる

**
彼女の声は甘く、時々
海風を含んですこし塩辛い
正確な発音でいくつかの
名前を呼んできたのだろう

その晩は静かな雨が夜通し降った
枕にしみこむような雨滴の音の中で
いつまでもほの白い天井に君は
その声の輪郭を描こうとしていた

朝までに雨はあがって
君の失敗を朝日が照らすだろう
同じ朝日がしばらく経って
彼女の寝顔を照らすように

それで許されることがあると信じて
声は名前を追いかける
いつか星が砕ける日まで

  Contains sample from S.Natsume

 


自由詩Copyright カワグチタケシ 2013-04-20 21:25:37
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