ズー

きみが家具の本を読んでいるなんて知らなかった。僕は豆のスープとベーコンサンドがあれば午後には何かしらの腸詰めづくりがひかえている朝でも全然だったし、そういう日の夜に限って首が痛むのを我慢すればきみが座らなくなったベンチからみえる高いナラの木のてっぺんにこと座の星が腰を掛けるのもまったく、そう全然だった。


椅子ですか?ええ。椅子は今どこにいますか?椅子は今焼き場のなかの十脚です。お元気でしたか?いえ、それがもう十脚のなかで椅子は小さく小さくなっています。それでは選ばれませんね。ええ、座れません。あなたは椅子ですか?いえいえ、私は座れません。


日曜日の晩だ。この地方の男は背もたれのあるお風呂で鼻歌を流す。祖父や父に習い弟はマーチを流し、わたしは祖母や母のように背もたれを洗った。この地方では日曜劇場がはじまるまで誰も黙らないし、わたしたちの椅子はない。


僕は、全然だった。一ページ目のマホガニーも二ページ目の芝生みたいなラグマットも、そう全然だった。豆のスープとベーコンサンドのように、高いナラの木にやすむこと座の星のように、きみの読む本のことのように、うれしくおもわれているなんて、全然だったね。


自由詩Copyright ズー 2013-04-17 02:03:56
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