春の残り香
佐東

・ 
揮発性の朝の
つめたい胎盤の上で
藤の花房が ゆれている



風にさらわれて
透けてゆく春の上澄みは
背中から咲いてゆく
焦点のあわない花の群れの
ひそやかな発声で
霧雨に袖を通したまま
髪を
ほどいてゆく



うすむらさきのこきゅうを連れて
雨をめぐる 優しい人の
指で梳かれた 朝の縫い目の
影を ゆわえて
ささやいて
 
 
 
 




自由詩 春の残り香 Copyright 佐東 2013-04-16 12:18:21
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