トマトケチャップバスタイム
さわ田マヨネ


につめられてたのがさっきまで
ちゃんとパックされておいてたのに
チューブの構造とりきんだこぶしの関係性で
もうどうにもとまらないみたい
泣くのはからだにいいんだよってちょっとなげやりな医者は言っていて
だからすっきり独白タイムはその場にいるたったひとりのための健康法として
そう思うと林間学校はなんだかんだたのしかった


なんだかんだしらずしらずに事件を待ちのぞんでいる
隠さなくてもよかったのかもしれない
笑顔は筋肉の緊張で
生まれたえくぼを裏返すと
ちいさな口内炎がみつかったりもした



こっそりとふきだしている
近所のトマト農家は赤字でとけてしまっていて
更地にさびた機械がよこたわっている
こぞんでしまいそうな
さしこむ夕日が遅れてとどいてしまう部分に
そっと花束をさしむけておきたい
それであと三日はもつのだろう
アリバイなんて本気だせばきっとひりだせられるものだった



ゆがませたかった時間軸のこと
整体師は不思議そうに首を傾げていて
かえしてもかえしても音だけがとじこめられている
重力に逆らって引きこんでしまいたかった砂時計の中身は
さらされているようで実際は秘密にされた手の届かないものだった
逆行して向かっていきたいのにどうしたってこぼれていってしまう
いつかそこにあった記憶の断片のこと
ほんとうにちゃんと目をこらせば
ずっとむこうの水平線が
波立って細かくふるえているのを
みてとることができたのだろう



赤くにじんだYシャツの話
サスペンスのおもしろさはここにきて安定感を増してきていて
娯楽に困ったらとりあえず映画館にいくことにしている
僕たちの知っているサイコメトラーは
たどることでもう一度
体験しなおすことに成功していて
そうやってうかびあがらせていったものが
ゆくゆくは
整合性がとれなくなってしまった
だれかがついていたうそにいきついていて
でもなんだろう
まだまだがんばれるきみはこんなもんじゃないって
おもってしまうことがあって
もうちょっと本気だせよって
犯人にはおもってしまうこともあって




帰り道からぬるくなった日ざしが傾いていて
どこかで金属音が鳴りひびいていた
巻き戻すことで奏でられる情景がきっとサスペンスの醍醐味で
それは普段オルゴールのように
箱の中に大切にしまわれていてほしかったのに
本音がけっきょくぎこぎことうずまいてしまうっていう
もうどうにもとまらなくなってしまうっていう
整合性なんてやっぱりたもてないものでして
とりあえず南下したくなっていて
右側からまぶしかったバスのなかで
細かくふるえる模様がやがて
にじんでいくのをじっとみていた


自由詩 トマトケチャップバスタイム Copyright さわ田マヨネ 2013-04-11 16:44:42
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