痩せた猫
そらの珊瑚
声がする
崖っぷちに
かろうじて
爪を立て
呼んでいる
誰かを
よるじゅう
求めている
雨に打たれて
傘も持たない
家もない
母もない
優しい思い出も持たない
痩せた猫が
わたしを呼んでいる
骨と皮だけになり
眼も見えず
それでも
おまえは呼ぶことを止めない
ふるえながら
恨むこともせず
ひたすらに
生きることを止めない
そっと
抱けば
一輪の野の花のように
軽い
たったひとつ残った熾火のように
かすかな
熱
痩せた猫が
今夜も
わたしを呼んでいる
なけなしの声で
自由詩
痩せた猫
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そらの珊瑚
2013-04-09 08:17:15
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